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割賦販売法と業者の契約解除、残金一括請求

割賦販売法と業者の契約解除、残金一括請求について

20日以上の相当な期間を定めてその支払を書面で催告する必要があり、その期間内に支払がなかったときに限ってのみ、契約を解除したり、残金の一括請求ができることになっています。

民法では、履行遅延による解除権については、次のように規定されています。

「契約当事者の一方が期日がきても債務を履行しないときは、相当の期間を定めて債務を履行するように催促し、それでも相手方が債務を履行しないときは、はじめて契約を解除することができる」とあります。

また、「相当期間を定めて催告し、その期間内に支払がないときは契約の解除ができる」としていて、相当期間については具体的な規定がありません。

なぜ、民法では「相当期間」の猶予をするのですか?

どの契約においても、通常は、定められた期限が経過すれば、債務者は「債務不履行の責任」を負っているといえます。ですから、改めて解除のために催告するのは何かおかしいような気もします。

しかしながら、民法は、なるべくなら契約関係を維持し、本来の目的を達することが望ましいと考えているのです。

そこで、「相当の期間」を猶予することで、もう一度催促して、債務者に再考を促すことにしているのです。

「相当の期間」とは、どのくらいの期間なのですか?

上記のように、民法には規定がないので、その時々の取引の内容や、債務の性質などに応じて、個別具体的に、客観的事情で定まることになります。

これは、裁判例でも、「催告期間が不相当であっても、催告の時と解除の時との間に相当の期間が経過していればよい」というように、日数は明確にしていません。

通説・判例では、「3日程度」とされています。

割賦販売法の場合は?

割賦販売や割賦購入あっせんにおいて、購入者が指定商品や役務提供代金の賦払金・弁済金を支払わないということで、契約を解除したり、期限の利益を喪失させて残金を一括請求したりしようとするときは、20日以上の相当な期間を定めて、それを書面で催告し、その期間内に支払がないときに限られています。

これは、割賦販売などの場合は、うっかり支払期限を過ぎてしまったり、短期的な手元不如意を原因として、残金を一時に求めることは、購入者にとって著しく不利になるからです。この「20日間以上の相当な期間」というのは、購入者が金策をする期間も考慮されているのです。

割賦販売で、「1日でも支払が遅延した場合には期限の利益を喪失する」という特約を結んだ場合、どうなるのですか?

割賦販売法の対象になる取引では、こういった特約を結んでも無効になります。金銭消費貸借契約等では、一般的な特約ですが、割賦販売法では、この点で異なるということになります。

では、割賦販売法における期限の利益喪失の事由は、どのようなものですか?

割賦販売法施行規則では、次の3つに限定されています。

■購入者の支払義務の不履行
■購入者の信用が著しく悪化した場合
■購入者に重要な契約条項違反があった場合

上記の「購入者の支払義務の不履行」の場合には、20日間以上の相当な期間を定めて、その支払を書面で催告しなければなりません。

ちなみに、本催告は、到達主義を採用しています。

よって、催告状が購入者に到達した日から20日以上ということになります。

関連トピック
商品の瑕疵とクレジットの支払拒否について

三社間取引の場合には、売買契約が完全に履行されていないわけなので、クレジット会社には、その事由が解消されるまで「支払停止の抗弁」を申し出ることができるようになりました。

商品の瑕疵

商品の瑕疵とは、そのものが当然もつべき性質をもっていないこと、取引上普通に要求される品質が欠けているなどの不完全な状態を意味します。

二者間契約の場合で商品に瑕疵があった場合

この場合の契約では、購入者と販売店の債権・債務は相関関係にあります。

これは、相手が債務を履行しなければ、自分の債務の履行を拒否できる権利が発生するということを意味します。これが「同時履行の抗弁権」といわれるものです。

この場合、商品に瑕疵があれば、販売店は債務を完全に履行していないのですから、購入者は「同時履行の抗弁権」を主張することができます。

これによって、購入者は瑕疵のない商品が引き渡されるまで、代金の支払を拒否することができるのです。また、もしそれが履行されない場合は、契約自体を解除することもできます。

三者間契約の場合で商品に瑕疵があった場合

この契約の場合には、購入者と販売者の他にクレジット会社(割賦購入あっせん業者)が登場します。

そして、購入者は、販売店と商品の引渡しに関する売買契約等を結び、代金の支払に関する契約は、クレジット会社と立替払契約を結ぶことになります。

これら2つの契約は別個のものなので、売買契約によって生じた事由が、立替払契約に関する代金の支払にどのように関係させるかが問題になります。

この問題については、割賦販売法では、支払停止の抗弁を規定して、クレジットの対象になった売買契約・役務提供契約に関して、販売業者、役務提供事業者に生じている事由をクレジット会社に対抗できることになりました。これが「抗弁権の接続」といわれるものです。

よって、商品に瑕疵がある場合には、売買契約に関して販売業者に主張でき事由ですから、この事由をもってクレジット会社に立替払契約上の支払の停止を主張することができることになります。

ちなみに、支払停止の抗弁を申し出る要件とされているわけではありませんが、購入者は書面で具体的に事由を明らかにするよう努めることとされています。

クレジット会社の手続き

消費者からの「支払停止の抗弁」に対して、クレジット会社は申出の内容を調査し、必要に応じて購入者への請求を停止する手続きをとります。

一方、購入者の抗弁の事由は、販売店との契約上のものなので、クレジット会社に抗弁するだけでなく、「販売店との間でその事由の解消に努めなければならない」と定められています。

抗弁の事由について

昭和59年の通産省(現在の経済産業省)産業政策局長通達では、抗弁の事由として、次のような例示をしています。

■商品の引渡しがなされないこと
■商品に破損、汚損、故障、その他瑕疵があること
■商品の引渡しが遅れたため、商品の購入目的が達せられなかったこと
■商品の販売条件となっている役務の提供がないこと
■その他商品の販売について、販売店に対し生じている事由があること

また、平成11年10月施行の割賦販売法の改正で、指定役務、指定権利が加えられたことによって、役務の未提供、期日に遅れた役務の提供、役務提供内容の相違、クーリングオフ・中途解約の未清算、関連商品等の未納の場合に、支払停止の抗弁が認められるようになりました。

「抗弁権の接続」の適用が受けられない場合について

次のような場合には、「抗弁権の接続」の適用がうけられません。

指定商品が購入者にとって商行為になるとき
抗弁権の接続というのは、あくまでも取引関係に不慣れな消費者を保護する目的で認められていますので、それが商行為にあたる場合は、適用がありません。

ただし、平成12年の割賦販売法の改正で、業務提供誘引販売個人取引については、仮にそれが商行為になるとしても、そもそも業務提供誘引取引販売が取引に不慣れな一般消費者との間で行われることが多いことから、商行為から除外されています。

購入者が支払うべき金額が政令(割賦販売法施行令)13条の3で定めた金額未満のとき
政令で定めた金額とは、支払金額が4万円※に満たない場合とされています。

抗弁権の接続の適用に、金額の下限を定めたのは、次のような理由からです。

・クレジット会社による抗弁事由等の事実関係の調査にかかるコストがいたずらに増大してしまうこと
・少額のため十分な調査ができず、抗弁権の接続の適正な運用がなされなくなること

※リボルビング方式の場合は、現金価格が3万8千円です。

購入者による支払の停止が、信義に反すると認められるとき
購入者が次のような行為を行ったときは、信義に反すると認められるので、クレジット会社に対する抗弁権の接続は、適用されないと解されています。

・友人・知人などに名義を貸した場合
・販売店と共謀して、クレジット会社から資金を不当に得ることを目的として、架空の売買契約等を行い、購入者がクレジット会社に虚偽の契約意思を示した場合
・クレジット会社と立替払契約等が成立しているにもかかわらず、クレジット会社に無断で販売店との間の売買契約等を合意解約した場合
・クレジット会社に無断で販売店にクレジット代金の支払を行った場合
・見本・カタログなどの提供内容の相違による支払停止の抗弁を申し出る場合で、その申出が商品受領後長期間経過した後になされた場合

抗弁事由が解決したとき

当然、支払停止額の支払を履行することになります。

支払停止の抗弁による売買契約等

支払停止の抗弁によって、支払を停止する申出がされたとしても、それはあくまでも、購入者と販売店との売買契約等を原因として生じる事由について支払を停止するものなので、売買契約等自体を解消するものではありません。


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